COVID-19の嵐が過ぎ去って人々がウゴウゴ動き出した感じの6/25(土)に、仙台で開催されたsendai micro Maker Faire 2022に前日にできたばかりの「どこでもドア」みたいのを持っていきました。
もう上の写真を一瞬で見ただけで分かる通り、周りが明るくて全然映ってなくて「何なの?」状態でしたが、実は離れた場所にある360°カメラで撮っている映像をネットワーク越しにリアルタイムでドーム内に投映するシステムを一式作って持って行ったのでした。
なんか久しぶりのリアル(ちいさい)Maker Faireは、とってもモノづくり大好き感溢れてて、自分のブースにあまり居ないで周りのブースの人の話を聞きに行く人病に掛かってしまい、半分の時間も自ブースに居ない~という状況に陥ってしまったので、この記事で詳細メモさせていただこうと思った次第です。お時間ある時にでもお目通しください。
今回もしつこく「どこでもドア」みたいの作った訳
以前MFT2020の時にも同じような仕組みのものを出したのですが、それは既に撮影済の360°動画を3台のプロジェクタを使って全方位にマルチプロジェクションしたものでした。
2年間ず~っと家にいると、それまでに行ったことのある町々が今どうなってるかな~とyoutubeで検索したりすると、結構沢山の人々が地元の街を歩く様子を360°カメラや超広角のスマホのカメラやGoProなどで撮って出ししていることに気が付きました。
そこで、そうした映像をもっと簡単な仕組みで、さもその場所にいる様に見えるシステムが作れないかな~と思って作ってみました。
全体構成(用意したもの)
全周囲360°グルリとプロジェクタによる投影が可能な自立式のドーム型スクリーン
自分の会社で作っている段ボール製ドーム型スクリーン=ペーパードーム「FPV130」 のプロ向けにモデル「FPV130HC」のデモ用のもの。
鑑賞者の影がドームのスクリーンに落ちない「戦場の絆」のゲーム筐体を参考に空間構成された、中に人が入って座って鑑賞するプロジェクタスタンド
1台のプロジェクタを用いたドームの投影方法は、センター打ち方式(ドームの中心付近にプロジェクタを配置して投映する方式)とオフセット方式(ドームの中心位置以外の周辺部などにプロジェクタを配置して投映する方式)と半球ミラー方式(ドームの裏側などにプロジェクタを配置してドームの周辺に置いた半球ミラーで反射投映する方式)の3つ。
半球ミラー方式は、以前MFT2018で作った方式。
なので今回はオフセット方式で挑戦しよ~と思いましたが、いろいろ空いた時間で試してみるもドームとプロジェクタの関係をカチッと決めないとNGだったり、そのための仕組みとかが大掛かりになたりで、時間と様々なリソースが追い付かずに早々に断念。
なのでセンター方式で~と思いましたが、センター打ち方式の欠点は、最も鑑賞者が見たい場所であるドームの中心部にプロジェクタが位置取ること。それにより邪魔だし熱いしファンの音は煩いし~で、コンテンツに集中できなくて特に小さなドームでは致命的。
それで、いろいろ考えている内に思い出したのが、コロナの嵐吹き荒れる最中2021年11月30日午前2時にひっそりと姿を消した戦術チーム対戦ゲーム「機動戦士ガンダム 戦場の絆」ドーム型のP.O.D.筐体。
その断面図か何かを以前見たことがあるのを思い出すと…確か着座したゲーマーの頭上にプロジェクタが配置されていた筈。ということで、その空間配置を真似て、天吊りモードのプロジェクタを鑑賞者の頭上に配置してドーム内に投映できる様にすることで鑑賞者の影がスクリーンに落ちることも無いし、プロジェクタの排気が当たることも無いし、ファンの音も気にならない様に。そして副産物としては頭上のプロジェクタ内蔵のスピーカーから音が降ってくるので、大きな音を出す必要がないのも大きな利点となりました。
ドーム内投影のためのソフト
オープンソースのプロジェクション用ソフト「OMNIDOME(windows版)」 を使用。以前はMac版しか無かったのですが少し前にwindows版が上がってました。windowsじゃない人は「OMNIDOME(mac版)」で。
配信のためのソフト
今回はWindowsを受信側PCにmacを送信側PCに使ったので、ゲーム配信などの際に用いるOBSとNDIを使うためのプラグインを、それぞれにインストールしました。配信側PCと受信側PCが両方ともwindowsの場合はspoutで送受信できると思います。同様に配信側PCと受信側PCがmacの場合はsyphonで送受信できると思います。
実際の流れとしては、カメラからの映像をUSBで送信側PC(mac)に取り込みOBSでNDIで配信、その映像を受信側PC(windows)のOBSで受信しつつその画面をspoutで配信してOMNIDOMEで取り込んで投映する流れです。※OMNIDOMEがNDIを取り込めない為。
今気が付きましたが、送信側はOBS使わなくても、そのままNDItoolで出しても良かったですね。。。多分よく分からなくて安易にOBSに走ってしまったのでしょう。。。
送信側の準備
THETA Vをライブストリーミングモードにして送信側PC(mac)とUSBで繋いでいます。OBSで見るとEquirectangular方式の映像がそのまま表示されます(上の方の写真に写っていますね)。最初は4mmの魚眼を積んだ一眼レフをHDMI出力しキャプチャデバイスでUSB経由でPCに読み込んで試していたのですが…動作が不安定過ぎて今回は諦めました。
ネットワーク
同じネットワーク内ならNDI、spoutsやsyphon同士であれば映像のやり取りが可能です。今回は展示場ということで結構WiFiが混むかな?と思い、有線LANを組んで送信側と受信側を結びました。
ドーム内投影の為のレンズアダプター
実は、今回最も時間と手間の掛かった部分です。構想から試作や実験を繰り返し、何度も使ってみてやっと安定的に使える様になりました。実はそのままオフセット投影にも使える優れものとなっています。実際に現在ではペーパードームのデモ用投影キットとして使用しています。
具体的には、短焦点ではないプロジェクタにRaynoxのDCR-CF187PRO(広角レンズアダプタ)をドーム内投影に最適な位置に取り付けるためのアダプターとなります。
最初はいろいろ欲張ってプロジェクタとの位置関係も保てるフレームも含めて汎用的に使える様に考えていましたが、プロジェクタの新製品の登場や生産中止とかが結構頻繁にあって諦めて、187Proを保持する部分だけを作り、そのパーツを3Dプリントしたものに20mm角のアルミフレームを組み合わせてプロジェクタとの位置関係を保てる様にしました。3Dパーツはコチラからダウンロード可能です。
ミスミで手に入る20mm角フレームの場合は、上記部品で187Proを挟んだ後に両サイドをM5ネジでターンブラケット20(SFK-44A)の片方と留めて、もう片方を端面をM5タップ加工した20mm角フレーム(SFF-204)に留めて、他のフレームへと接続していく事となります。調整が感覚的に行える様、ターンブラケットの回転軸がRaynox187Proの光軸と一致する設計です。
一般的に手に入る短焦点ではないプロジェクタと組み合わせてみた組立参考写真は以下となります。
反省と次回への展望
周りが明るい場合にどうするか?ですかね
明るすぎて、正直何が映っているのか?自分でも定かではなかったです。前回のSMMFでは遮光のためにシートを上部に被せていましたが、今回はシートをすっかり忘れてしまいました。次回は、その辺りを何とかしたいですね。例えばスクリーン面を再帰性反射シートで作るなのでしょうか?
また、最近VR180という3Dの見え方に興味があって、それをリアルタイムでドーム内投映してみたいですね。※現在、安価にVR180を撮影できるカメラが入手困難なのが問題ですが…。
お礼
なんか今回のSMMFとても良かったです。
個人的には、昔東工大で開かれていた頃のホントにモノづくりにハマっていて楽しんでる人たちが集まっている空間な感じがしました。会場が小さいからでしょうか?「良く見る」様になり「良く気が付き」そして興味が湧き出てくる感じがブースを回る度に感じられて…東京の無限感に最初から絶望感を覚える感覚が無い安心感もあるのでしょうか?
回りきれる安心というか、言い表せなくてごめんなさいですが、とても楽しく回れました。そのせいで、自分のブースを疎かにするという愚行も犯しましたが「なんか以前はそうだったな~」と、もっと気楽にMaker Faireに参加していた自分を思い出しました。
今は、なぜかイベントに参加するから成功させようとか、完成度を高めようとか、ちゃんと動くようにしようとか、来てくれる人の利益を考えよう~とか、責任感や義務感みたいなものを感じてしまい「自分が楽しめているのか?」少し疑問だったりします。
以前は、当たり前ですが努力はしますが出来なくても間に合わなくてもいいや感がありました。その「いい加減さ」が、今回会場にあった気がします。久しぶりの個人参加だったのも有るかもしれませんね。なんか、とても良かったです。(自ブースに反比例して)
今は全てのワークショップ活動をお休みしている「make道場」も少し先になるかと思いますがリアルなワークショップも少しずつ再開できれば良いな~と思っています。Sendai micro Maker Faire 2022 ありがとうございました!