1枠30分の「Scratchで作った映像をドームに投影して遊ぶ~という企画」ですが、全15枠だった予約枠は全て埋まり&来なかった1人の枠も、その場で参加希望した人に遊んでいただき、全部で18組が体験&遊んでいただくという、想定外の大盛況でした。
普段はパソコンの画面の中でチマチマ作りこんでいるモノが、大きくなって&取り囲まれて、いつもとは少し異なる感覚でのプログラム体験をしていただけたかと思います。来てくれて&体験していただけて、誠にありがとうございました!※参加者の約半分がScratch初心者だったのは意外でしたが、それなりに大きく動き出されて激しく動く猫さんを楽しんでいただけました。
さて、ここからはどうやってドーム型スクリーンの中に投影したのか?という投影の仕組みをサラッとメモしていきます。DIYでドーム内投影~など目指している方の参考になれば幸いです。
まずはドームの真ん中にプロジェクタを置いて確かめる
右図が横からみた図で長方形がプロジェクタ、そこから出ている光が黄色い矢印で、左図が横16縦9の映像が投影される範囲を示します。
ドームの中心軸にプロジェクタを配置して投影すると、上図の様に投影されます。うっすら長方形の四角が映っていますが、そこが最初の説明の横16:縦9の投影範囲ですね。
この状態で、広角レンズコンバーターのRaynox 187pro(185proでもほぼ一緒)をプロジェクタの光が出る投光口に配置すると…
こんな感じでキレイにドームの内側いっぱいに投影されます。
こうやって、ドームの中心位置にプロジェクタを配置して丸い映像(ドームマスター形式の映像といいます)を投影する方式を「センター打ち方式」と言ったりします。
この方式は、簡単にきれいな投影が可能なのがメリットですが、一番見たい位置であるドームの真ん中にプロジェクタがあって邪魔、うるさい、熱いなどの問題があって、小さなドームの場合は特に狭いのでデメリットになります。
そこで、小型ドームの場合は、なるべくドームの端(淵)の方にプロジェクタを配置して投影する「オフセット方式」という投影方法をとったりします。※1台投映の場合
これまではオフセット方式はとても難しく、プロの人たちや時間がたっぷりあって&突き詰める根性(根気)があるアマチュアな人たちの独擅場でした。しかしダンボール製ドーム型スクリーン「ペーパードーム」の登場から6年後に出現した「Amateras Paperdome Player」によって、飛躍的にドーム投影し易くなりました。
ただしAmateras Paperdome Playerは、ペーパードームの投影システムも含めたパッケージ製品向けの専用投影プレイヤーなため、そのままでは手作りドームやペーパードームの組み立てキットで作ったドームに用いるのは簡単ではありません。
また投影に用いるプロジェクタの機種がバラバラだったり、ドームの保持方法も異なるため「こうすればできます!」とは一概に言えないと思っています。
そこで今回は、基本的な流れと考え方を示して、そこから先はそれぞれ頑張ってね!という「野良投影方式」でのサポートメモとなります。そのことを重々承知の上で参照ください。※Amateras Paperdome Playerの使い方とかはマニュアルで!というスタンスです。
では先に進みましょう。
プロジェクタと広角レンズコンバーターの位置関係を探る
まず最初の図を再度見直してみましょう。
この右側の図を見ると、プロジェクタから出る光が上の方に広がっているのが分かります。これは机の上とかにプロジェクタを置くことが多いことから、机を避けて上の方に投影する様に考えられているからです。(まれに正面に出るモデルもあります)
センター打ちの場合は、その光の広がりの中心軸に広角レンズコンバーターの中心軸を合わせて、上にも下にも右にも左にも均等に光が広がる様にしていました。※再掲します。
このプロジェクタと広角レンズコンバーターの位置関係を、オフセット方式の場合は以下の様に微妙な角度に設定します。
右の図を見てみましょう。プロジェクタから出る光の下限あたりに、広角レンズコンバーターの中心軸が重なるように配置することで、上の方に光が広がる様にしています。その光の広がる部分にドームを配置して投影するイメージです。このオフセット方式には、もうひとつの配置方法が考えられます。
右の図を見ると、プロジェクタの位置は変わりませんが、今度はプロジェクタから出る光の上限あたりに、広角レンズコンバーターの中心軸が重なるように配置することで、先ほどとは逆の下の方に光が広がる様にしています。その光の広がる部分にドームを配置して投影するイメージです。図を見て明らかな様にドームが逆さまになっているので、この方式の場合はドームやプロジェクタ含めて一式を逆さまにすると同時に、プロジェクタから映し出す映像も上下逆に投影する必要があります。(プロジェクタの天井吊り下げ投影モードを用いたり、上下反転した映像を用意します)
この2つの方式のドチラが良いのか?は、実際にそれぞれの方式で投影して選べば良いと思います。今回は三脚に取り付けたプロジェクタの安定度から2番目の方式にしてみました。※1番目のものはプロジェクタ本体とドームが近過ぎて設置できませんでした。
プロジェクタと広角レンズコンバーターの位置関係を保つ仕組みをつくる
これは実は数年前から公開していますが、ミスミなどで手に入る20mm角のアルミフレームと組み合わせることで安定した投影角度と位置を保てる広角レンズアダプターのレンズサポーターを、3Dプリンタで作成できる様に3Dデータの共有をしています。
正直、プロジェクタの種類によって全然フレームの組み合わせなどは異なるので、提供できるのはここまでで、あとは勝手にやって~な野良スタンスです。(一切責任は取らない方式)昨年の記事に少し詳しく書いてあるので参照ください。
ドームとプロジェクタの位置関係を勝手に決める
ここからはAmateras Paperdome Playerに内蔵されているペーパードームの「PDT150」というパッケージ製品の3Dモデルのプロジェクタの位置に似た感じの位置に、先に組んだプロジェクタや広角レンズコンバーター&サポーターを配置する方法です。
まずはAmateras Paperdome PlayerをインストールしたPCとプロジェクタをHDMIで接続し、プロジェクタを拡張ディスプレイに指定。Amateras Paperdome Playerを起動します。Amateras Paperdome Playerを開いて「表示」タブをクリックして「モデル」か「PDT150」の60度傾斜モデルを選びます。
こんな感じでドームが出現します。以下からが野良投影の方法となります。
次に、自分がプロジェクタを置きたい位置に画面の中の3Dモデル自体をグリグリ回転させてデフォルトでは左上にあるプロジェクタを、希望位置に持っていきます。
私は、プロジェクタを載せる三脚の大きさなどから左下に来る様にしました。この3Dイメージをそのまま実際のドームとプロジェクタの位置関係にお置き換えたのが下写真です。
ドームの3角形が位置決めの参考になると思います。
実際にテストパタンを投影してみて「投影補正」する
「シアター制御」タブをクリックし画面を切り替え、「投影補正」ボタンを押すと投影補正画面が表示されるので、ここでドーム内に実際に表示されるテストパタン映像とPC画面の映像をじっくり見比べながら補正ポイントを移動して、実物のドームの映像がなるべくキレイに投影されるように合わせていきます。(この辺りAmateras Paperdome Playerと一緒にダウンロードされるマニュアルを参照ください)
「だいたいOK」がポイント
今回は上記の感じでOKとしました。
合わせるポイント(優先順位または譲れないポイント)は下記の順です。
- 1)ドームの中心
- 2)ドームの縦の中心軸
- 3)見る人の正面部分(もっとも目がいく部分)
- 4)その左右
- 5)上
- 6)下=プロジェクタに最も近い部分(これはプロジェクタの位置により異なる)
と考えていますが、やってみると分かる通り投影補正ポイントはネット状にすべて繋がっているため、1つのポイントを動かしても周囲のポイントがその影響を受けます。また単純にポイントを上下に動かしても、ドームに投影されている補正ポイントはドーム表面に沿って立体的に移動するので、思ったように補正ができない場合が多いです。
私の場合は、まずは少ない補正ポイントではじめて、少しずつポイントを増やしていき、調整したい箇所のポイントを選んだらパソコンの矢印キーをクリックして少しずつ動かして徐々に合わせていきます。補正ポイントは縦横4つぐらいで満足する様にしています。
上記の優先順位の(1)から揃え始めて(4)くらいまで頑張りますが、(5)は時間が許す限り、(6)は相当時間があったり、もうずっとこの場所に設置する~などの場合くらいしか頑張りません。※時間が溶けます。
投影してみる
まあOKかな~というところで、テストパターンを黄色と緑の市松のものに変更します。
すると実際に投影される映像も上記の様に変な角度で表示されるので、Amateras Paperdome Playerの「プレーヤー」タブで切り替えて「エフェクト」をクリックして表示されるエフェクトウインドウの下方にある「共通」タブをクリックしてから、左上の「+」より「変形>」で「回転」を選びます。
表示されるスライダ-を、実際のドームに投影された様子を見ながら調整して、右側に黄色、左側に緑の市松模様が表示されるようにします。※黄色と緑の境界軸を垂直にします。
この状態でドームマスター映像がドーム内に映し出せる状態になります。※諄いですがAmateras Paperdome Playerのマニュアルをよく見ながら進めてください。
Scratchの映像はデスクトップキャプチャで表示する
Amateras Paperdome Playerのファイルメニューから「デスクトップキャプチャを開始…」を選んで表示される青紫の枠を正方形にして、大きくしたScratchの再生画面の真ん中に位置取りしてから「OK」ボタンをクリックすると、正方形の青紫の枠に囲われた範囲の動画がドーム内に投影されます。
プロジェクタの位置を再考すべき
このプロジェクタを三脚で配置する方式は、イベントとかではお勧めしません。というのも今回のMF東京でも、何度も、注意しても、お願いしても、手の届く範囲にあるレンズの表面をペタペタ触るのです。子供たちが。特に小さな子供たちが、キラキラ光っているので我慢できないのです。これはチャンとカバーする&固定化するしかないかな~と思いました。
あとは私達ペーパードームが作っているパッケージ製品「PDT150」の様に、上部の手の届かないところにプロジェクタ類を配置するのがベストだと思いました。我ながら良くできているな~と再認識した次第です。
また三脚方式はポンと置くだけで済みますが、現地で投影を開始するまでの調整時間が1時間くらい必要でした。これも考えどころかな~?と思いました。
以上で今回のMaker Faire Tokyo 2023での「ドーム de で Scratch!!」の投影のしくみのメモは終わります。何らかの参考になれば~です。
最後にMaker Faire Tokyo 2023で「ドーム de で Scratch!!」を体験してくれた皆さん、勝手な思い付きに付き合って楽しんでいただき、誠にありがとうございました。次回は多分遠隔地からのリアルタイム3Dドーム投影に挑戦したいと思っています。
ではでは、またEnjoy making!!